21世紀に入って大相撲は、角界の闇の部分が噴出して、数々の”不祥事”が相次ぎました。大麻問題の責任を取って協会理事長が辞任したり、野球賭博問題や八百長問題がぞくぞくと発覚して、力士の本業の相撲に影響を及ぼしたのです。

大相撲の世界では、平成時代(1989年~)初期のハワイ出身力士の活躍も影を潜め、2000年代(平成12年~)も半ばになると今度はモンゴル出身力士が台頭し始めます。

第68代横綱・朝青龍(あさしょうりゅう)の年間全場所優勝、第69代横綱・白鵬(はくほう)の63連勝、続く第70・71代横綱も日馬富士(はるまふじ)・鶴竜(かくりゅう)といった具合です。

しかし、そんな外国勢の力を借りた相撲界に、暗雲が立ち込め始めるのです。始まりは、平成20年(2008年)の「大相撲力士大麻問題」でした。

6月24日のこと、ロシア出身の幕内力士・若ノ鵬(わかのほう)が、東京都墨田区錦糸町の路上で落とした財布の中に入っていたロシア製のたばこから大麻成分が検出されました。若ノ鵬は8月18日に逮捕され、所属する間垣部屋と自宅からは吸引パイプなども見つかり、21日の緊急理事会で解雇処分となります。

若ノ鵬の師匠である間垣親方(第56代横綱2代目若乃花)は、事件の責任を取って協会理事を辞職、若ノ鵬は解雇処分無効の訴訟を行なうものの、結局それは認められず、翌年2月にロシアへと帰国しました。

この事件には、更に関連した騒動が持ち上がっています。それは、若ノ鵬逮捕の翌月2日、抜き打ちで簡易的な尿検査を行なった際に、同じロシア出身で大嶽部屋の露鵬(ろほう)と北の湖部屋の白露山(はくろざん)にも陽性反応が出たのです。

結局、露鵬と白露山も訴訟にまで持ち込んだものの解雇、大嶽親方(元関脇貴闘力)は委員の身分からただの年寄に降格、北の湖親方(第55代横綱)は協会理事長を辞任することとなります。

大麻問題は、ロシア出身力士に限った話ではありません。平成21年(2009年)1月30日には、兵庫県出身の若麒麟が大麻所持で逮捕され、翌日付で引退届を提出、2月20日に起訴され、4月22日に有罪が確定しています。

平成22年(2010年)5月20日には、新たなる角界の不祥事として、野球賭博問題が取りざたされることととなります。

週刊誌記事によれば、大関琴光喜が暴力団が胴元のプロ野球賭博に関わっているとし、最終的に現役力士・親方・床山(力士の髷を結う職人)・元力士・部屋マネジャー・会社役員にまで広がっていることがわかりました。

協会では琴光喜と大嶽親方を解雇、当時前頭の雅山・豊ノ島・豪栄道・豊響・若荒雄・隠岐の海、十両の普天王・千代白鵬・清瀬海・大道、幕下以下の力士複数、親方の時津風・武蔵川・九重・陸奥・八角・阿武松・佐渡ヶ嶽・春日野・宮城野・木瀬など錚々たるメンバーを謹慎処分としたのです。

平成21年(2011年)2月2日、今度は八百長問題が表面化してきます。前年に発覚した野球賭博事件の捜査の途上、警視庁が押収した力士の携帯電話のデータの中から、金で本場所の白星(取組の勝利)を売買するやり取りが見つかったのです。

この問題を受けて、3月の春場所は中止となり、5月の夏場所は「5月技量審査場所」に変更し、無料公開で優勝額・外部表彰辞退・懸賞金辞退・着物への広告自粛・NHK地上波TV・ラジオ中継未実施・相撲案内所(相撲茶屋)休止・アルコール販売と持込禁止という処置となりました。